私が1997年にイギリスに渡った時、受け入れてくださった英国の親方です。
お宅にホームステイさせていただき、本当に親切にしていただきました。
  このころ、仕事には少し慣れてはきたものの、結婚したばかりで、本当にこの仕事で生計を
立てることができるのか、不安に感じていました。
思い切ってクリスに、このことを打ち明け、相談しました。

「あなたの国では、若い職人も沢山いて、茅葺きも見直されている。しかし、私の国では、
茅葺きは減少していく一方です。若者でこんなことをしているのは、私ぐらいです。
本当にこの仕事を続けていけるのか不安です。」

クリスはこう答えました。
「HARU 茅葺き技術は、人類最古の技術。もっと自信を持ちなさい。」

このとき、私の中で、音をたてて変化していく自分を感じました。
私は世間一般的な考えにとらわれていたのです。本質をまだ見極めてはいない。
  再び日本に帰ってきたとき、思いました。
「もう一度、一からやり直そう。」

2002年、クリスは敗血症のため、若くして他界されました。
クリスは私にとって、ずっと目標です。
自信を失ったとき、彼にもらった形見の皮ジャンを着て、あの言葉を思い出すようにしています。